NIKE JAPANが正式に扱うPSG関連の商品は現在のところゲームシャツのみということだが、昨今の好調さも相まってか13/14シーズン・モデルの売れ行きはすこぶる良好なようだ。事実、ショップに足を運んでみてもホームモデルはほぼ品切れ状態で、サイズによっては入手困難な一品となっている。 昨季、デイヴィッド・ベッカムの引退試合となったホーム最終戦で、新シーズン・モデルとして初披露されたのを目にした時には、何だかイマイチのデザインにも思えたのだが…。 今季に入っての“真の強豪”の部類に足を踏み入れたかのような安定した強さを観ていると、ユニフォームも急に良く見えてくるから不思議だ。 そう。 今のPSGはとにかく強いのだ! ボルドーを2-1で破ったフランス・スーパーカップを皮切りに、ここまで今季公式戦で21試合を戦って未だ無敗(文章末以外を書き上げていた一昨日の時点では…)!CLではGroup首位で決勝T進出を決め、リーグ・アンでは最初の2試合こそドローだったものの以降調子が上がるのと比例するように順位も上昇、首位に立った10節以降その座を守り続けている。 先週末の強豪リヨンとの対決も4-0の完勝劇。 今のPSGを止められるチームはリーグ・アンにはちょっといないかもしれない。新しいシーズンで試合を重ねていくなかで、昨季と大きく変わったと感じられる点は3つある。◆Ⅰ◆支配力が増した! 今季の試合を観ていると、ほとんどの試合で支配率が相手を大きく上回り、自分たちのペースで進めている。安定したGK、堅固なDF、キープ力に長けたMF、点の獲れるアタッカーとほとんど穴がない強チームに仕上がっているわけだが、支配力という点に関していうと中盤の構成が充実しているのが最も大きい。 無尽蔵のスタミナを誇りピッチの至る所を駆け回るブレーズ・マテュイディ、小粋なテクニックで相手を交わし長短のパスで決定機を創出できるマルコ・ヴェッラッティ、そしてその2人の後ろでバランスを取りボールを散らすティアゴ・モッタ。この3人の絡みというかバランスが抜群に良い!攻守に素晴らしく効いている! 特に昨季は相次ぐ怪我で12試合しか出場できなかったモッタが、今季はコンスタントに試合に出れているのが大きい。モッタ不在の折りには代わりに中盤の底を務めることが多かったヴェッラッティが一つ前のポジションに入れるようになったことで、彼の持つ攻撃センスがゲームの中で存分に発揮できるようになったからだ。昨季、観た折りには将来有望な若手とはいえ、“ピルロ2世”というほどだろうか!?とも思っていたのだが、今季の一つ殻を破ったかのようなキレキレのプレーぶりを観ていると、その表現もあながち大袈裟ではない気がしてくる。軽快なステップとフェイントで相手を交わす様はまるで“イタリアの牛若丸”だ! 交代出場が多いとはいえ、ローラン・ブラン監督が積極的に登用してる印象もある18歳の新鋭アドリアン・ラビオも、ピッチに立てば必ず何かしら自分の色を示している。奇しくも188cmの身長と左利き足という点ではモッタと重なるが、能力的にも近い将来間違いなくその後釜になれるはずだ。 他に中盤では出場機会を減らしてきているとはいえハヴィエル・パストーレも控えている。続々とビッグネームが加入するなか、遠慮しているわけではないだろうが、比して存在感が薄くなってきているが、時折見せる本来の輝きを目の当たりにすると、まだまだ見限ることはできないと思ってしまう。 続々と新戦力が入ってくるチームだが、今のチームに関していうとベースとなっているのは昨季のチーム、メンバーになる。元々の能力には疑いの余地はないだけに、1シーズンを経てようやくチームとして高いレベルで熟成されてきているのが今の状況かもしれない。 また、短く繋いで組み立てるだけでなく、長いパスを出せる選手がたくさんいるというのも見逃せない。モッタ、ヴェッラッティ、パストーレあたりはいうに及ばず、最後尾のチアゴ・シウヴァも展開を変え、一気にチャンスに繋がるような精度の高いフィードを繰り出せる。様々なポジションにゲームを組み立て、チャンスメイクのできる選手を揃えているのが、このチームの攻撃の構築においての一つの強みといっていいだろう。◆Ⅱ◆得点力が上がった! リーグ・アン15節を終えた段で昨季は25点だったチームGOAL数だが今季は既に34点!同じく3点以上あげた試合が昨季2試合だったのに対し、今季はここまでで5試合(全体の1/3)もある。 これはひとえにエディソン・カヴァーニの加入に依るところが大きい。当初は2トップで起用されたりしたものの、結局はサイドアタッカーの位置に落ち着いたというのが現状だが、その豊富な運動量が攻守に与える影響は絶大だ。最も能力を発揮できるのはCFWのポジションなのかもしれないが、サイドに据えられてもキッチリGOALを重ね15節終了時点でリーグ・アン2位の10GOALをマーク。リヨン戦ではルーカス・モウラの左CKをニアで角度を変えるヘディングシュートを決めたが、左右両足に頭など多彩なGOALを決められる得点センスはホンモノだ。 ちなみに15節を終えてリーグ・アン・トップスコアラーの座に躍り出たのが、リヨン戦で2PKを決めたズラタン・イブラヒモヴィッチになるのだが、この2人で既に20点以上奪っているのだから得点力が上がったという結果も当然といえば当然だ。PSGはPKキッカーが基本ズラタンと決まってるが、仮にカヴァーニが自分で得た幾つかのPKを決めていれば、2人の順位も入れ替わったものになっていたことだろう。 それはさておき…、最近のズラタンの爆発力がこれまた半端ない!CLも含めた直近11試合で何と17GOALという猛ラッシュ!開幕直後はなかなかGOALが増えず、カヴァーニが前線に加わったこともありチャンスメーカー的役割も担っているように映ったが、どうしてどうして。不動のエースは俺だ!といわんばかりの活躍ぶりである。軽快な動きを観ているとコンディションも良さそうだし、身体も昨季より絞れているように映る。 昨季のPSGはとにかく僅差の試合が多かった印象が強い。チャンスはそれなりに作るのだが、得点王を獲ったイブラヒモヴィッチ以外は軒並みそれを外しまくり、何とか奪ったリードを守りきるというのがパターンだった。チーム総得点69の約半分30GOALを彼が記録していることからも“ズラタン依存”は明白であり顕著だった。 大エース一人にマークが集中しないという点からもカヴァーニの加入は本当に大きい。他の選手の決定力は相変わらず…という部分もあるが、前の3つのポジションのうち2つをこのズラタン&カヴァーニが占め、残る一つをエセキエル・ラヴェッシ、ジェレミー・メネズ、ルーカス・モウラらで競い合うだけにそれぞれうかうかしてはいられない。出場機会が得られないと何れ不協和音が出てくる怖れはあるが、今のところはローテーションが上手く回っているようだ。 リーグ・アンのチーム・シーズン最多得点記録が何点かはちょっと分からないが、今季のPSGの破壊力であれば80点超えも望めるのではないだろうか!?得点王争いを牽引する2人にも注目だが、チームとしてどれだけのGOALを積み重ねられるかにも興味が尽きない。◆Ⅲ◆層が厚くなった! 試合中映るベンチの映像を観ても分かる通り、とにかく高いレベルで層が厚くなった。上記にあげた面々以外にも、CBには先ほど遂にセレソン入りを果たした19歳の新鋭マルキーニョスが控え、両SBは右がグレゴリー・ファン・デル・ヴィール、左はマクスウェルがファースト・チョイスだが、それぞれクリストフ・ジャレ(昨季のレギュラー)とクロスの質が高いリュカ・ディニュ(フランスU-21代表)というレベルに大差ない存在が居並ぶ。 チームは11月23日に行われたリーグ・アン14節ランス戦から、12月14日開催予定の18節レンヌ戦まで、毎週末と週半ばに試合が行われるという過密日程を過ごすことになっているが、それも上手く乗り切れそうなくらいの充実した陣容だ。 さすがに!ズラタンやモッタが欠けると根幹に関わりそうだが、その他はターンオーバーを敷いてもそれほどレベルが変わらないように思える。 うん。 むしろバルセロナあたりと比べると、レギュラーはいざ知らず、チームとしての層の厚さはPSGのほうが全然上ではないかと思えるほどである。 昨季、19シーズンぶりにリーグ・アンを制したPSGの次なる野望はもちろん悲願のCL制覇ということになろうが、今のPSGの状態とライバルになりそうな他国有力クラブの現状を見ると、今季においても十分その可能性がありえそうな気さえしてくる。 新監督を迎えたマンチェスター・ユナイテッドやチェルシーには一時ほどの強さは感じられないし、ブラン監督は「バルセロナを避けることができれば上位に進出できる」なんて語っていたようだが、昨季の準々決勝を思い起こすまでもなく、今のバルセロナと戦えば案外互していけるのではないか!?と見るのは楽観的すぎるだろうか。 怖いのはディフェンディング・チャンピオンのバイエルン・ミュンヘンと、前監督のカルロ・アンチェロッティが指揮を執るレアル・マドリーあたりが一筋縄ではいかなそうだが、もちろん!歯が立たないというほどの差はない。 決勝Tの抽選が楽しみだ。 リーグ・アンのほうは他チームとの力の差を見る限り、既に連覇は確定的!と宣言しても良いだろう。大型補強を敢行したとはいえモナコはまだPSGと互角に戦うには安定度が足りない。マルセイユやリヨンといったライバル候補も、陣容に見合った質のサッカーを披露する今のPSGを超えるのは容易ではない。 正直、リヨンに完勝した試合を観た折りには、マジメに今季無敗優勝もありえるのでは!?とも思ったが、中3日で行われた昨夜のエヴィアン戦で“事件”は起きた。アウェーでの対戦とはいえ、下位チーム相手に0-2で今季初黒星を喫してしまったのだ。 放送がなかったので詳細は確認できていないが、押していながらGOALを奪えず、終盤にカウンターから2発を叩き込まれてTHE END!だった模様。昨季から続いていたリーグ戦無敗記録は26でストップした。 前述通り、チームは休む間もなく土曜にソショーをホームに迎える次節を控える。 「無敗記録を続けてきたが、今夜の敗戦は長い目で見ればいいことだったかもしれない。気持ちを切り替え、このクラブの目標に集中し続けていかなければならない」 体力的にも精神的にもキツイ部分はあるだろうが、エヴィアン戦後にイブラヒモヴィッチが語った言葉を信じて、チームがどう立て直されていくのかを注目して観戦したい。
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